骨が足りないなどの難症例もご相談ください
歯周病の進行や長期間の欠損放置などにより、顎の骨がやせ細ってしまうケースは少なくありません。インプラント治療では、人工歯根をしっかりと固定するために、十分な骨の厚みと高さが求められます。
そのため、骨が不足している場合には、骨を増やす再生治療(骨造成)や、他部位から骨を移植する方法を併用することで、インプラント埋入が可能になる場合があります。
当院では、骨量不足などの難症例にも対応可能な体制を整えており、精密検査を行ったうえで、最適な治療法をご提案いたします。
「骨が少ないから無理かもしれない」とあきらめる前に、まずは一度ご相談ください。
インプラントを断られる症例について
下顎の骨が部分的に足りないケース
下顎に局所的な骨欠損があると、インプラント体を安定して支えるだけの骨量が確保できず、「インプラントは難しい」と診断されることがあります。インプラント治療では、人工歯根が骨としっかり結合することが前提条件となるため、骨の量や厚みに不足がある場合は、治療計画の見直しが必要になります。
上顎の骨の高さが足りないケース
上顎では、骨の高さが不足しているとインプラント体の一部が「上顎洞」という空洞に突き出るリスクがあります。この状態で治療を行うと、インプラント体が上顎洞を傷つけ、炎症(上顎洞炎)を引き起こす可能性もあるため、慎重な判断が求められます。骨の厚みが足りないと診断された場合は、骨を増やす処置が必要になることもあります。
全身疾患によって外科手術が難しいケース
重度の高血圧症や糖尿病などの全身疾患を抱えている方は、手術時の体調変化によってリスクが高まるため、インプラント治療が断られることがあります。ただし、病状がコントロールされていれば、主治医と連携しながら安全に治療できるケースもあります。インプラント治療の可否は、疾患の種類と現在の健康状態によって異なるため、事前に詳細な相談が必要です。
足りない骨を補う「骨造成」
インプラント治療では、人工歯根を安定させるために十分な骨の厚みと高さが必要です。
一般的なインプラントは直径3〜6ミリ、長さ4〜21ミリ程度で、周囲にさらに2〜3ミリ以上の骨が必要とされます。しかし、長期間歯を失ったままにしていた場合や、重度の歯周病で骨が大きく吸収されているケースでは、必要な骨量が不足していることがあります。
骨量が不十分な状態で無理に治療を進めると、インプラントの脱落や感染などのリスクがありますが、骨が足りないからといって治療を諦める必要はありません。
現在では、骨を補う「骨造成(こつぞうせい)」という再生治療が確立されており、自家骨や人工骨を用いて不足した部分を補填することが可能です。骨造成には複数の手法があり、患者様の骨の状態や治療方針に応じて最適な方法を選択することで、インプラント治療の選択肢を広げることができます。
骨造成のメリット・デメリット
骨造成のメリット
インプラントに必要な骨量を確保できる
顎の骨が十分でない状態で無理にインプラントを行うと、歯茎からインプラント体が露出するなどのリスクがあり、安全性が確保できません。そのため「骨が足りないからインプラントはできない」と診断されることもあります。しかし、骨造成によって不足している骨量を補えば、従来は治療が難しかったケースにもインプラントが適応可能となります。これにより、安全かつ確実な治療の選択肢が広がります。
歯と歯ぐきの見た目を美しく整えられる
顎の骨が痩せてしまっていると、その部分の歯ぐきも下がり、歯の長さが不自然に見える、あるいは歯ぐきが凹んで見えるといった審美的な問題が生じることがあります。骨造成で骨の厚みと高さをしっかり確保することで、歯と歯ぐきのバランスが整い、自然で美しい口元を再現することが可能になります。
インプラントの安定性が高まり長期的な使用につながる
インプラント体を長期間安定させるためには、しっかりとした骨の土台が欠かせません。骨造成で十分な骨量を確保することで、インプラント体がしっかりと固定され、脱落や緩みといったトラブルのリスクを抑えることができます。また、治療後も定期的にメンテナンスを受けることで、良好な状態を長く維持し、安心して使用し続けられる可能性が高まります。
骨造成のデメリット
全身状態や生活習慣によっては適応できない
骨造成はすべての方に適応できる治療法ではありません。たとえば、重度の全身疾患をお持ちの方や、喫煙の習慣がある方などは、骨の再生がうまく進まない可能性があります。特に糖尿病や心疾患などの持病がある場合、傷の治癒や感染リスクへの配慮が必要となります。こうしたケースでは、事前にしっかりとした診査・診断を行い、必要に応じて入れ歯やブリッジといった別の選択肢を検討します。
治療期間が長くなる傾向がある
骨造成は、骨の再生を促すために外科的処置を行い、その後しっかりと骨が形成されるまでに数ヶ月の治癒期間を要します。そのため、インプラント治療全体の期間としては、骨造成を伴わないケースと比べて長くなる傾向があります。とはいえ、骨造成によって得られる安定した土台は、長期的なインプラント成功にとって大きな意味を持ちます。
当院の骨造成手術の種類
ソケットリフト
上顎の奥歯にインプラントを行う際、骨の厚みが不足している場合に選択されるのが「ソケットリフト」です。
上顎の奥には「上顎洞(じょうがくどう)」という空洞が存在しており、もともと骨の厚みが少ない構造となっています。そのため、歯を失った状態が続くとさらに骨量が減少し、インプラントをそのまま埋め込むと上顎洞に突き抜けてしまうリスクがあります。
ソケットリフトでは、インプラント体を埋入する穴をあける際に、上顎洞を覆う粘膜(シュナイダー膜)を下から少し持ち上げ、その隙間に人工骨を入れます。こうすることで、傷口が小さいままでも骨をしっかり増やし、インプラントの同時埋入が可能となります。
サイナスリフト
サイナスリフトは、上顎の骨が広い範囲で著しく不足している場合に行う骨造成手術です。
主に複数本のインプラントを埋めるケースなどで適用されます。歯茎の粘膜を切開し、骨に穴をあけてから、上顎洞内の粘膜をやさしく剥離して上方に持ち上げます。できたスペースに人工骨や自家骨(ご自身の骨)を移植し、必要な骨量を確保します。
この方法では、骨が再生されるまでに数ヶ月(一般的には6ヶ月程度)を要します。その後、骨の状態を確認したうえでインプラント体を埋め込む手順を踏みます。
GBR(骨誘導再生法)
GBR(Guided Bone Regeneration/骨誘導再生法)は、インプラントの周囲に骨が足りない場合に用いられる再生治療です。
骨の再生が必要な部分にメンブレン(専用の膜)を設置し、その内側に骨補填材を充填することで、骨を新たに形成させていきます。
骨の厚みや高さを整えることで、インプラント体がしっかりと固定される状態を作り出すことができます。
骨造成の治療期間と注意点
そのため、通常のインプラント治療よりも治療全体の期間は長くなる傾向にあります。また、術後には腫れや痛みが生じることもありますが、適切なケアや処方薬の使用により、症状は時間とともに落ち着いていきます。
なお、患者様の骨の状態によっては、インプラント体の埋入と骨造成を同時に行う「同時埋入」が可能なケースもあります。治療計画を立てるうえでは、CTによる事前診断や顎骨の状態を見極めた精密な設計が重要です。